ロックフェラーとは?/ セントラルファイナンス
[ 428] マンハッタンを歩く: 「石油王」ロックフェラー一族
[引用サイト] http://www1.ttcn.ne.jp/~fujiyan/manhattan/un/memo_rock_main.htm
ちなみに、ロックフェラー家は「親日家」と言われており、例えば、1923年関東大震災で崩壊した東京大学の図書館の再建寄付金400万円が「ロックフェラー財団」から寄贈されています。第二次世界大戦前後、日米関係が悪化する中で休止した、NYの「ジャパン・ソサイエティ」の復興にもロックフェラー家が一役、買っています。また吉田茂首相が、日本再独立のため「サンフランシスコ条約」調印後にNYを訪問し、ロックフェラー家にたいへんに歓待されたとか。 ちなみに、ダーウィンの「種の起源」が1859年に発表され、「適者生存」、言い換えると「弱肉強食」は自然界の摂理であるという考えが出されます。その考えは自然界から他の現象の分析にも応用され、経済界では、「安価で良質な製品を作る強い企業」が、弱い企業を倒産させて生き残っていくのは当然のことであり、大企業の「企業合同」「独占」を正当化する根拠ともなりました。 ちなみに同年、父親のビルは、マーガレット・アレンという女性と重婚(!)したとされています。ロックフェラーが大富豪となったはるか後年のことですが、母親エリザの葬式に実父ビルは姿を現わさず、ロックフェラーは葬式を執り行う牧師に、「母親は未亡人であったことにして欲しい」と頼むことになってしまいました。 1861年に南北戦争勃発し、米国経済は大打撃を受けますが、戦時中から北米を中心に工業化・産業化が進んでいきました。さて、ここでロックフェラーは人生の岐路を迎えました。 ロックフェラーが農産物の商社を営んでいたオハイオ州では、エリー湖畔の「港町」、クリーブランドが中心した。「ヘルズ・キッチン」散歩で書きましたように、NY州の州都「アルバニー」と「エリー湖」までのエリー運河が1825年に開通し、「アルバニー」と「マンハッタン」まではハドソン川がすでに結んでおり、この農産物を中心とした流通路の中継地として、クリーブランドは栄えていた、という訳ですね。で、オハイオ州内の農産物はクリーブランドへ運ばれて、そして運河、川によりマンハッタンまで運ばれる、という構図。 しかし、ロックフェラーはオハイオ州の農業とその流通の将来性を疑いました。1850年頃からほぼ水運と同じルートで鉄道が整備され、さらにこの鉄道は西へと向かっていきます。シカゴより広がる中西部の大穀倉地帯から農産物が運ばれてくると、価格競争でオハイオ州産の物は勝てなくなる。 北に「エリー湖」、南は工業都市「ピッツバーグ」、西にいくと「オハイオ州」。また、ニューヨーク市、フィラデルフィア市などの大都市で囲まれた円の中にいると言うわけです。便利な場所から石油が産出されたものですね。 で、ロックフェラーは、原油をこの「石油地帯」からオハイオ州に輸送し、そこで石油を精製、そして船、鉄道でNYなどの大都市に送るというビジネスなら、今後の将来性が見込める、と考えた次第。 さて当時の石油製品は圧倒的に「灯油」であったそうです。「灯油」というと「暖房」というイメージですが、当時は「照明」用に主として使われていました。他の照明用燃料-鯨油など、と比べますと無臭であり、火力も強い。(ちなみに、ペリー提督が日本開国を求めてきたのは、米国が鯨漁の寄航場所として日本を開港させましたが、鯨漁の目的は「鯨油」獲得でした)。 当時の石油「精製」ですが、これはホントに単純なもので硫酸で「洗う」というだけことだったそうです。初期投資額が少なく新規参入が容易なので、若きロックフェラーも参入してきた、という訳ですね。 しかし、簡単に新規参入できるということは、競争が激しいことはもちろんのこと、値段も安定しない。また「幼稚」な精製をされた「灯油」は品質がバラバラで、消費者に迷惑を掛け通しだったそうです。そのために「標準となる油」を出荷し、一方で価格の安定を行わなければならない、という良く言えば「社会使命」をもって、ロックフェラーは会社名を「スタンダード・オイル」=「標準の油」としました。現代風の大規模石油精製工場を作り、品質の安定した、安価な製品を産み出していきます。そしてその「大義名分」、はたまた彼の「野望」、のため、彼は今でいう「企業合同」により、石油精製業界を「統一」しようとします。 19世紀後半は、アメリカで鉄道網が発達していく時代となります。その輸送需要の少なくない割合を、油田から原油を精製工場まで運送し、出来上がった加工油を消費地まで送る、という業務が占めました。 「サウス・インプルーブメント」社は、鉄道会社と精製会社が作りだしたスキームで、ロックフェラーと同盟する精製会社の輸送運賃を、同盟していていない精製会社のそれと比べて安くするものです。これは、ロックフェラーがこれより前に行っていたことと同じですが、その後に付け加えられた条件が違います。高く設定された、同盟していない他の精製会社からの輸送運賃と、同盟している精製会社の輸送運賃の差額を、「リベート」として「サウス・インプルーブメント」社に支払う、というものでした。 このスキームの提案は、「鉄鋼王」カーネギーもお世話になった「ペンシルバニア鉄道」によるものだと言われており、ロックフェラーは後年、「自分から言い出したことではない」としています。しかし、ロックフェラーが「サウス・インプルーブメント」社最大の株主でした。上述した近隣の大手鉄道会社三社はスキームを受け入れました。輸送運賃価格と輸送需要の安定確保を考えてのことですね。 このスキームは、翌72年に「油漏れ」(笑)しまして世の人々の知るところとなり、「サウス・インプルーブメント」社は糾弾され解散し、結局このスキームは一度も作動しませんでした。ロックフェラーはその後、クリーブランド近辺の独立系精製会社に、安売りによる価格競争、原油、精製薬品や器具の地域での買占め、鉄道会社と組んで競争会社向けの運送運賃値上げの圧迫などで攻撃し、経営譲渡を求め着々と傘下に治めていきます。 そして今度は原油発掘業者側が連合して、ロックフェラー側には原油を売らない、と対抗しました。原油生産量のコントロールをしたわけですね。これは1970年代から80年代にかけてのOPEC(石油輸出国機構)も同様でした。しかし、生産連合側の泣きどころは、経済的にガマンできなくなった構成員が脱落して生産を増やしてしまうことでしたが、これはOPECの崩壊でも同様でした。 上述の、ペンシルバニア州の油田地帯の原油は枯れ始めました。そのためでもあるのでしょうが、ロックフェラーはさらに全米の石油精製会社を、膨大な力-鉄道網を使わせない、原料である原油を供給させない、そして安売り競争に持ち込む等々-で着々と傘下におさめ、1877年にはその全米シェアは90%となります。一方、既存の原油輸送手段-鉄道、馬車、あるいは人力-などに代わる、はるかに安価なオイル輸送手段として現れた「パイプ・ライン」網も、1880年代に株式買占めなどの方法で支配、また油の「小売部門」も着々と傘下に治めていきます。その裏側では、暴力や破壊行為などが、ロックフェラー派、反ロックフェラー派双方より、少なからず使用されています。 1891年に「持ち株会社」を、財政悪化(蚊が大量集団発生したための殺虫予算のためだとか(苦笑))していたニュージャージー州が法的に認めたため、「スタンダード・オイル・トラスト」は1892年解散、同州で「スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー」という持ち株会社の元で再編成されました。「スタンダード・オイル」はその後海外進出へ乗りだし、海外の情報入手などの便宜からニューヨーク、そのマンハッタン(ローワー・マンハッタンのブロードウェイ26番地)に、1885年「スタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク」を設立します。 1890年に「独占禁止法」が成立します。しかし、1896年の大統領選挙では、ロックフェラーは独占に対して寛容な共和党のマッキンレーに25万ドルの選挙資金提供を行い、マッキンレーは当選、ロックフェラー石油王国への政治的攻撃はしばらく後のことになります。 一方のロックフェラーは、1889年の母エリザの死をきっかけに、母、そして本人が信仰したバプティスト派の大学をシカゴに設立(シカゴ大学:正確には復興)するという最初の大型社会貢献事業を行います。 彼は若い頃から、バプティスト派教会とその新設に対して絶え間なく「寄付」(=収入の十分の一の献金)をしていましたが、宗教色の比較的薄い「社会貢献」はこれが初めてでした。 そして、ロックフェラーとカーネギーは、マスコミに「社会貢献事業競争」と言われるまでになりました。左の表は、当時の新聞が伝えた、彼ら二人の社会貢献費用の数字です。 しかし彼はストレスにより右の写真のように脱毛症、しかも頭だけではなく全身の毛が抜けていく、という病気になってしまいました。このことは、「弱肉強食を突き詰める」一方で、まじめで敬虔なバプティスト派信者、という、ロックフェラーが内部に持つ、2つの異なった性格を物語っていると言われています。 まずは、大企業の独占に寛容なマッキンレー大統領が1901年暗殺され、副大統領のセオドア・ルーズベルトが大統領となりますが、彼は行き過ぎた「独占」に対して攻撃を開始します。 この「スタンダード・オイルの歴史」は、「ロックフェラー王国」に立ち向かったターベルの「勇気」(父親は「報復」を恐れて、掲載中止を説得しようとしたそうです)とともに、いわゆる「企業告発」ジャーナリズム史上の第一号として礼賛を浴び、およそ100年後の1999年にニューヨーク大学のジャーナリズム部が行った、「20世紀アメリカ・ジャーナリズム作品ベスト100」の第五位となっています。 それを受けて「スタンダード・オイル」は、石油会社、化学会社やパイプ・ライン会社などの34社へと分割されます。「スタンダード」という「ブランド名」は使用を認められたようで、東海岸南部は「スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー」、東海岸北部は「―・オブ・ニューヨーク」、南部は「―・オブ・ケンタッキー」、西海岸南部は「―・オブ・カリフォルニア」・・・・等など、全米地域別に「担当エリア」が定められ、また「パイプ・ライン」会社などもそれそれに独立しました。 「スタンダード・オイル」解体後、石油会社の中で垂直統合機能を持ち、世界的な規模で展開する7つの大会社が、「セブン・シスターズ」と呼ばれていた時期があります。 さて、ロックフェラーの資産金額は、この解体により「世間」の把握が容易になり、1913年にそのピーク、9億ドルと推測されています。(ちなみに、「ロックフェラーの財産額速報」と題して、日次で速報を伝えていた新聞もあったそうです(笑)。)ただ「分割」しただけですから、大株主としては大きな影響力を持ち続けることのできたロックフェラー家ですが、このあたりから世論の攻撃に疲れてきたようです。 20世紀初頭は、貧富の差の拡大が激化する一方で、社会主義運動も活発になりますが、それはロックフェラー家の環境にも影響を与えます。長男ロックフェラーJr.の保有するコロラドの鉱山会社で大規模ストライキが発生、1914年に暴力衝突で死亡者が出て州兵が派遣されるなどのの混乱、そしてロックフェラーJr.は公聴会に呼ばれる、などのトラブルもあり、ロックフェラーJr.はますます経営から遠ざかり社会貢献事業に専念しようとします。 五男の「デイヴィッド」は、チェース・マンハッタン銀行の社長、会長となり、南米向け融資や、兄ネルソンがNY州知事時代に提案したものも含め数々の建設プロジェクトに参加。特に「ミッドタウン」に対して寂れ気味になりかかった「ローワー・マンハッタン」の再開発に、銀行在籍中、退職後も携わり、「ワールド・トレード・センター」、「サウス・ストリート・シーポート」、「バッテリー・パーク・シティ」などに関連。 ちなみに第四世代である「ジョン・D・ロックフェラー四世」(1937-)は、ウェスト・バージニア州知事を経て現上院議員です。彼はハーバード大学で日本の文化と言語を学び、日本の国際基督教大学(ICU)に留学しており、州知事時代にトヨタ自動車の工場誘致に携わったそうです。 ロックフェラー家が社会貢献に注ぎ込んだお金は膨大なものでしたが、石油業界を席巻していった当時から行っていれば、これほどまでには叩かれなかったろう、と言われています。つまり社会貢献事業は世間を欺くための道具である、と判断されてしまったわけです。 「ロックフェラー」系と「ロスチャイルド」系が世界の石油支配を巡って暗闘しているというものなど、「ロックフェラー家の陰謀」的なお話がありますが、拙サイトはそういう系統のサイトではございませんので、それに関連する掲示板への書き込み、あるいは作者へのメール送信などは、お断りいたします。 |
[ 429] 「ロックフェラー 対 ロスチャイルド」説の研究
[引用サイト] http://hexagon.inri.client.jp/floorA6F_he/a6fhe600.html
●アメリカを代表する「ロックフェラー財閥」と、イギリスを代表する「ロスチャイルド財閥」は、不倶戴天の敵であるという説がある。この説によれば、この二大財閥の対立構造は、そのまま米英の対決の歴史を物語るという。 ●この説を最初に日本で唱えたのは、「ハーバード大学国際問題研究所」の研究員で、現在、国際政治学者として活動している藤井昇氏であろう。彼は1994年に『ロックフェラー対ロスチャイルド──巨大対立軸のなか、日本の進むべき道を探る』(徳間書店)という本を出し、注目を浴びた。 「資本主義VS社会主義というイデオロギーの対立が終焉した今、世界を突き動かすダイナミズムはどのような構図で生まれるのか。第三世界を経済発展のエンジンにしようとする『グローバリスト』と、一国ないし一企業繁栄主義をとる『ネイティビスト』の経済対立の構図こそが、世界激変の真相である」と。 国際情勢の激変、その千変万化の実態を目撃していると、一体この現象の背後で、誰がこれらの激変を動かしているのか? と考えざるを得ない。永田町における極めてドメスティックな政変劇ですら、表面に報道されていることと、“真相”は異なっている。だとすれば、国際情勢の大変動に関しては、さらに重大な真相が隠されているのではないか、と思われるのである。 そこで、数々の“陰謀論”が登場することになる。いずれもナンセンスと思われるこれら“陰謀論”のいくつかのパターンを復習しておこう。 ◆ユダヤ陰謀論: 偽書『シオンの長老の議定書』などをふりまわし、何でもユダヤの陰謀にしてしまう説。この手の単純なデマゴギーを真に受ける日本人が多いのには、驚かされる。先日、日本で働いているイスラエル人と話したが、彼は「相当に知的レベルの高い日本人まで、この手の陰謀論を信じているのには参った」とうんざりしていた。全世界1500万人のユダヤ人が単一の陰謀をめぐらしているなどというのも信じられぬ話である。 ◆ロスチャイルド陰謀論: ユダヤ系財閥の中でも、もっともエスタブリッシュメント的であるロスチャイルド財閥を陰謀の中枢とする説。たしかにロスチャイルド家の系図の広がりは膨大である。しかし、そのことが必ずしもロスチャイルド家の権力もしくは影響力を実証することにはならないのではないだろうか。血が拡散し、血縁が増えるということは、ファミリーの結束力が弱まり、その力が分散し、他のファミリーの影響力が侵入してくるということでもある。 ◆ロックフェラー陰謀論: アメリカの、いわゆるWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)エスタブリッシュメントの中でも、もっとも名門のロックフェラー財閥を世界的陰謀の中心とする説。ロックフェラー家は厳密にいえば、南ドイツ出身のプロテスタント系のファミリーで、アングロサクソンではないが、広義におけるワスプ・エスタブリッシュメントの一員といえる。ロックフェラー財閥は、後述のように、時代の先行指標として注目すべきだが、決して単一の陰謀の中心になるほどの力はない。 日米欧委員会は、ロックフェラー財閥のデビッド・ロックフェラー氏が、ブレジンスキー元大統領補佐官などのアイデアに従ってつくった日米欧のエリート間の調整組織。カーター政権の主要閣僚がほとんど日米欧委員会のメンバーであることから注目を集めた。レーガン、ブッシュの共和党政権時代は休眠状態であったが、民主党のクリントン政権の誕生とともに再び注目を集めている。 CFR(対外関係評議会)は、やはりロックフェラー財閥を中心につくられたアメリカ外交政策の名門シンクタンク。たしかに第二次大戦直後から冷戦の開始、朝鮮戦争、ベトナム戦争の開始時点までの対外関係評議会の外交政策フォーラムとしてのコンセンサス形成力には抜群のものがあった。民主・共和両党の外交エリートを集め、超党派主義で、対共産主義の冷戦を戦い抜く基盤をつくった。しかし、ベトナム戦争での国論の分裂の時代から、CFRの外交政策形成力は著しく低下して来た。無視はできないが、今や老舗の一シンクタンクといったところであろう。 日米欧委員会についてみても、1年に1回、2日や3日の討論をやったところで、陰謀をめぐらすだけの中央集権的な力が生ずるわけではない。日米欧の政策にかかわるエリートの間に、一定のコンセンサスを形成しようとしてできた国際組織だが、ソフトな影響力に限ってみても、日米欧委員会を陰謀の中心とすることなど、とてもできないだろう。 近年、日本において“陰謀論”が流行している理由の一つは、日本の不景気、特にバブル崩壊のショックであろう。“アメリカをも凌ぐ勢いで発展して来ていた強い日本経済はどうなったのだ、今日の不況はきっと何者かの日本をターゲットにした陰謀であるに違いない”というような意見は俗耳に入りやすいのである。 しかしフリーメイソンやら何やら持ち出しての《神秘的》もしくは《一元的》説明論は、あまりに非現実的である。「今日の世界の激変は誰が動かしているのか」というような大きな疑問には、筆者は二段階で考えるのが適当だと思う。 根底的には、世界の資本主義の構造変化が、もっとも重要な変動の原動力となっている。単に日米欧市場のボーダレス化などのことをいっているのではない。今や世界の資本王義は、低開発諸国の経済開発ブームに成長の主要エンジンを求める方向に、構造転換をとげつつある。中国、東南アジア、インドの経済成長は急だ。さらにNAFTA(北米自由貿易協定)でアメリカと運命共同体になったメキシコ、またその南の中南米の国々もこれを追いつつある。中東和平とともに中東地域にも経済開発ブームがやって来ている。 1980年代に明らかになった先進資本主義諸国のマーケットの構造的停滞、実質経済成長率の低迷。確かに、マルチメディア・ブームなどが言われてはいるが、先進資本主義国における、実質経済成長に結びつく有効な投資機会は確実に減少している。1980年代初頭以来、「ハイテク成長論」「高度情報化社会論」「第三の波」等々のブームはあったが、現実には経済成長の余力はますますやせ細って来ている。 その一方で、資本は新たな投資機会を求めて、第三世界・低開発国へ続々と投資されてゆく。これらの国々では、既存のテクノロジーを展開するだけで、いまだに“高度成長”が可能だからである。 マクロ的に考えてみれば、先進国の人口は全人類のたった15%、低開発国(旧共産圏を含む)の人口は85%。先進国マーケットの構造停滞をしり目に、資本は増殖を求めて北から南に大移動を始めたのだ。今後の約100年は、第三世界の開発、近代化ブームが、世界経済を牽引してゆく最大のエンジンとなるであろう。 これは、資本主義の構造変化そのものなのである。この“構造変化”こそが、「世界激変を動かしている」最大の主人公であろう。これが本質論である。そして、このような南北間の共生的発展を推進しようとするグループ、人々、企業もいれば、このような潮流に反対しようとするグループ、人々、企業もいる。 実はこの2つの大きなトレンドのぶつかり合いこそが、政治や経済の内部で起きている矛盾・闘争・抗争・対立の実態なのである。 世界的に見て、多国籍企業的な財界は、おおむね、グローバリスト化する傾向にあるし、国内マーケット重視の企業、労働組合、農業関係者などは、自らの利害からネイティビスト化する傾向にある。また当然のことながら、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教・ヒンズー教等々、様々な宗教でも、原理主義運動は、ネイティビスト化する傾向にある。しかし大事な点は、多国籍企業的グローバリストの主張は何でもボーダーレス化しようというわけではない点だ。それぞれの国や民族の個性を生かしながら、低開発国の開発を行なっていこうという立場である。 一方、多国籍企業でも、アラブの対イスラエル・ボイコット・リストに載っていた「コカ・コーラ」や「AT&T」に代表されるシオニスト派と見られている企業は、真にグローバル化することはできなかった。英ロスチャイルド財閥の企業も、対アラブ問題からネイティビスト的傾向にあったと思われる。しかしこのような対立も、中東和平の本格推進とともに解消してきている。 また、財閥の中で、もっともグローバリスト的な第三世界開発戦略を明確に打ち出しているのが、米ロックフェラー財閥といっても差しつかえないだろう。ロックフェラー財閥のこのような親第三世界的な姿勢は、すでに第二次大戦前の中国でも見られた。中国での農村の生活改善や近代医療の普及に、ロックフェラー財閥はかなりの努力を傾注している。 第二次大戦後で画期的だったのは、1962年のフィリピンでのロックフェラー財閥による「国際稲作研究所」の設立であった。この研究所の研究は、いわゆる『緑の革命』による稲や麦の増産に結びつき、世界農業に広範で複雑な影響を与えることになる。 そこで時代の先行指標としては、ロックフェラー財閥がらみの様々な組織(日米欧委員会など)の動きを見てゆくことが、大事になる。これは「ロックフェラー陰謀説」ではなく、世界資本主義のお目付け役的な役割をになっているアメリカ保守本流の財閥が、多国籍企業的なグローバリズムの先行指標の役割を果たしているということにすぎない。各国の保護主義者、過激な民族派、宗教原理主義者などは、ネイティビズムの中心である。 このような立場からすれば、各国エリートの意見を知り、またその意見をある程度の枠内に収束させようと考え、そのために様々なエリートの協調機関・組織をつくってゆくのは当然のことであろう。 必ずしもロックフェラー財閥系ではないが、注目すべきエリートの私的な国際政策協調組織を思いつくままにあげてみよう。 ●現在、「ロックフェラー対ロスチャイルド」説が詳しく書かれている本は、先に紹介した藤井昇氏の著書『ロックフェラー対ロスチャイルド──巨大対立軸のなか、日本の進むべき道を探る』(徳間書店)である。(この他にもあるが、それについては後述する)。 ●この本は、中東が比較的安定していた時期(アラファトとラビンが和解した翌年)に書かれたものなので、今読むと、世界情勢(特に中東情勢)の分析に物足りなさを感じてしまうところがある。しかし、ロックフェラーやロスチャイルドなどの巨大財閥に興味のある人ならば、ぜひ読む価値のある本だと思う。 私(藤井)は1982年以来、3人のアメリカ人をパートナーとし、会員制の国際政治・経済の予測誌『ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート』を発行してきた。読者対象はビジネスマンおよび企業。そのほかに、コンサルタントとして、数社の企業の顧問も務めている。実業人、特にビジネスの最前線に立っている人々を対象にしているので、レポートやコンサルティングの内容にしても、空理空論は許されない。プロの目に堪える情報プロでなければ、このビジネスではサヴァイバルできないのである。 自慢話のようでまことに恐縮だが、近年に的中した予測を列挙させていただく。なお( )内はそれを予測した『ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート』の発行年月である。 ではどうして、このような予測が可能だったのか。私はどのような「ものの見方」(パースペクティブ)で、国際情勢を分析し、予測してきたのか。それがこの本のテーマなのである。 確かに、表面に現われた現象を追っていくだけでは予測はできない。「深層構造」をつかむ必要があるのだ。もちろん、幼稚な陰謀説に陥ることなしに。その方法論を公開しよう。要点は2つだけだ。 第1に、「世界情勢を財閥間の闘争と見る」ことだ。財閥という言葉が古ければ、「企業グループ」、もしくは「企業間の連携」と言い換えてもよい。世界の有力な財閥は激しい戦いを繰り広げており、それが国際情勢の実態をなしている。そして、財閥はそれぞれに支持する政治家を擁立している。その政治家たちが展開するのが国内政治・国際政治である。つまり、政治という現象の背後にある実態を見たいと思うならば、財閥間の激闘に目を向けるべきなのだ。経済が政治を支配する、という鉄則である。 さらに、この有力財閥が、国境を越えてさまざまに合従連衡する。大事なのはこの合従連衡の力学を把握することだ。 それでは、この財閥間の合従連衡を観察するときの再重要のポイントはなんだろうか。言い換えれば、いかなる財閥と、いかなる財閥の対決が最も重要なのか。これが第2のポイントである。 この《ロックフェラー 対 ロスチャイルド》の宿命の対決が分からないと、国際情勢の分析の予測もまったく的はずれなものとなってしまう。 ロックフェラー財閥もロスチャイルド財閥も、それぞれに力のある米英の有力財閥である。しかし、単一の司令中枢が世界をコントロールするというほど強力ではないし、世界はそれほど単純ではない。そんなことは健全な常識を働かせてみれば、よくわかるだろう。 ロックフェラー財閥が代表しているのは、アメリカの「保守本流」系の財閥である。「保守本流」とは、人種・宗教的な観点からいえば、いわゆる「WASP」的な財閥といってもいい。 という意味だ。「アングロ・サクソン系」とは、ここでは「イギリス直系」の意味と理解しておいていいだろう。つまりWASPとは、イギリスから植民地アメリカへ移民してきて、今日のアメリカの基礎をつくった人々の直系の子孫というわけだ。 たとえば、湾岸戦争で活躍したコリン・パウエル統合参謀本部議長も、シュワルツコフ将軍も、その気質が、はなはだ「WASP的」だといわれる。パウエル議長は黒人でジャマイカ移民の息子だし、シュワルツコフ将軍はドイツ系だが、その精神(スピリッツ)が、独立不羅の開拓者魂にあふれたWASPそのものだ、というのだ。彼らは“人種的”にはWASPではないが、“社会的”には、WASPの仲間に入れてもよいわけだ。 そこで、社会的な定義の枠を広げ、アメリカの「保守本流」とは、WASPが培ってきたような「アメリカの伝統的で保守的な価値観を持つ人々」と定義しておこう。人種・宗教的に大雑把にいえば、「白人=キリスト教」的な世界である。 このようなアメリカの保守本流の財界で最も力があり、かつ著名な財閥がロックフェラー財閥である。ロックフェラー家の出身は南ドイツで、一族のなかではプロテスタントの一派のバプテスト(洗礼派)が最も多い。つまり厳密にはWASPではない。しかし、ドイツ系だがユダヤ人ではなく、プロテスタントであり、カトリックでもない。今日においてはアメリカの「WASP的」なる財閥の代表選手がロックフェラー財閥なのである。 このロックフェラーに代表される「アメリカ財界保守本流」と、世界各地で、そして産業各分野で最も先鋭に対立しているのが、ユダヤ系ロスチャイルド財閥なのである。 ロスチャイルドは、もともとはドイツのフランクフルト出身の大ユダヤ財閥で、その子供たちが英独仏などヨーロッパ各地にネットワークを広げて勢力を大いに誇示したが、今は、イギリスのロスチャイルド家が最も力が強い。英NMロスチャイルド銀行が、財閥の中心的存在となっている。 ともあれ、ロスチャイルド財閥の影響力は、いわゆる「ユダヤの陰謀説」の根拠になったほどに巨大である。そして、アメリカ保守本流財界の代表がロックフェラー財閥であるように、シオニスト系財閥の代表が英ロスチャイルド財閥なのである。 開業させ、それぞれがロスチャイルドの支家となった。上の写真は左から、長男アムシェル(フランクフルト本店)、 WASPという言葉の意味を厳密に考えたように、ここで「シオニズム」「シオニスト」という言葉の持つ意味を正確にとらえておくことが必要だろう。 シオニズム運動とは、ユダヤ人の間に起きた祖国(イスラエル)建国運動である。イスラエル建国(1948年)後は、イスラエルの拡張主義、対アラブ強硬主義を支持することをシオニズム、そうする人間をシオニストと呼ぶことになる。 大事なのは、すべてのユダヤ人やユダヤ財閥がシオニストではない、ということだ。あとで詳しく述べるが、ワーバーグ家というドイツ系のユダヤ財閥は、その初代の時代においてはシオニズムに反対であり、ロスチャイルドとも対立していた。また逆に、アメリカの財閥のなかにも、人種的にはユダヤ系でなくとも、ロスチャイルドと連携する財閥も出てきた。 そこで、本書では「ユダヤ」という言葉を使わずに、あえて、「シオニスト」という言葉を使うことにする。「ユダヤ」は民族と宗教の名称である。これに対して、「シオニスト」とは、イスラエル国家の反アラブ拡張主義・強硬路線を支持する政治的立場を意味する。ユダヤ人でなくともシオニストとなる場合もある。 ロスチャイルド財閥が、「シオニスト系財閥」であることは疑いがない。そして、このロスチャイルド財閥と連携し、米政財界保守本流と対立する企業や財閥を「シオニスト系」と呼ぶことにする。したがってイギリスはもちろん、フランスやアメリカにも、シオニスト系の企業や財閥は存在することになる。繰り返し言うが、この場合「シオニスト」とは、政治的立場を意味する用語である。 アメリカの「アングロ・サクソン」派のなかでも、最も強力なロックフェラー財閥。そのロックフェラー財閥を代表格とし、それと連携するのがアメリカの財界保守本流派。これと最も強力に対立するのが、イギリス最強の財閥でイギリス「シオニスト」派のロスチャイルド財閥。英ロスチャイルド財閥と連携する企業群も世界中に多い。ロスチャイルドの19世紀以来の影響力を思えば、当然のことであろう。 世界情勢を読み抜くうえで、最も重要な対立軸は、この《米保守本流派 対 英シオニスト派》の対立なのである。 この対立軸は、そもそも《アングロ・サクソン派》と《シオニスト派》の気質の違いがあるところに、ロックフェラーとロスチャイルドというそれぞれの代表的な財閥が、勢力争いをするところから、必然的に生じてきた対立である。この対立図式は、アメリカがイギリスと競い合う国際政治上の大国として登場した、20世紀の初頭以来存在し続けてきた、宿命の対決なのである。 日本人はとかく、「英米一体」と見て、英米間の激しい対立に気がつかなかった。英米はともに「アングロ・サクソン」国家だ、という幻想である。イギリス最強の財閥がユダヤ系のロスチャイルド財閥であることに思いを致せば、「英米一体」と容易に言い切れないことに気がつくはずである。 《米保守本流派 対 英シオニスト派》の対立は、世界中に実に甚大な影響を与えてきた。というのも「二極分解」の力学が作用し、世界中の企業群、財閥が、大雑把ではあるが、《米保守本流=ロックフェラー財閥》の同盟者もしくはシンパと、《英シオニスト=ロスチャイルド財閥》の同盟者もしくはシンパに、色分けされてしまうからである。 これは陰謀論でもなんでもない。かつての冷戦時代の世界各地の地域紛争を考えてみれば、よくわかるだろう。たとえば、北ベトナムをソ連が応援すれば、南ベトナムをアメリカが支援する。アフガニスタン政府をソ連が支援すれば、アフガンの反政府ゲリラをアメリカが援助する。ニカラグアに左翼的で親ソ連のサンドニスタ政権が誕生すれば、反サンドニスタのゲリラをアメリカが支援することになる。アメリカやソ連が必ずしもそれを望まずとも、世界各地の地域紛争では両極化が進んだ。一方が「親ソ派」であれば、他方は必然的に「親米派」になる。逆もまた真なり。ほとんどすべての地域対立が、「米ソ対決」の二極化の論理に支配されてしまったのである。 《ロックフェラー 対 ロスチャイルド》対立についても、ほぼ同じことが言える。ある業界で、一方がロックフェラー(米保守本流)系と手を組めば、同業者のライバル企業は、ほぼ確実にロスチャイルド(英シオニスト)系の支援を仰ぐようになる。二極分解の論理が貫徹してしまうのである。 それではより具体的に、両陣営のおもだった企業はどことどこなのか。英米の企業を中心に、産業分野ごとに、《米保守本流系》と《英シオニスト系》の対立軸を確認していこう。 第1に、実は、日本・ドイツ・フランス等々の多くの企業も両陣営に識別されるのだが、あまり包括的にやっても焦点がぼけるので、政治的立場がはっきりしている両陣営の中核的企業に限って以下に紹介する。 第2に、《米保守本流系》同士、《英シオニスト系》同士、株の持ち合い、企業提携、経営者の交流などを通じて、相互に通じてはいるが、日本の「系列」のように、常に株の持ち合いのような公的な関係が確かめられているわけではない。筆者が長年これらの企業を観察してきた結果に基づく分類である。 ロックフェラー財閥の中核であったスタンダード石油が分割されてできたのが、エクソンやモービルである。特にエクソンは、メジャー中のメジャーで、世界一の石油企業。今日もロックフェラー財閥の中心的な存在である。 これに対して、オランダの「ロイヤル・ダッチ石油会社」とイギリスの「シェル石油会社」を、ロスチャイルドが音頭をとって合併させたのが、「ロイヤル・ダッチ・シェル」である。 このイギリス=オランダ連合のロイヤル・ダッチ・シェルの子会社的存在が、英国のブリティッシュ・ペトロリアム(英国石油:略称BP)だ。ロスチャイルド系のロイヤル・ダッチ・シェル(以下シェルと略称)とロックフェラー系のエクソンは、石油・エネルギー業界の両横綱として、世界のエネルギー利権を争奪してきた、不倶戴天のライバルである。 オランダは、『アンネの日記』を思い出してもらえばわかるように、ユダヤ人の力の強い国だ。中世から近代に移行し始めたヨーロッパで、比較的宗教の自由のあったオランダにユダヤ人たちが集まり、これが一時、世界を席巻したオランダのパワーの根源になった。後述する電機のフィリップスも、オランダ生まれのシオニスト系の多国籍企業である。イギリスとオランダはかつてライバル関係にもあったが、シオニスト・コネクションという点では、相通じているのである。 このイギリス=オランダをつなぐ、「ロイヤル・ダッチ・シェル」連合と、米財界の雄「スタンダード石油」(エクソンの前身)は、1920年代から、世界中で、エネルギー利権の激烈な争奪合戦を繰り広げてきた。かつてのオランダとイギリスの植民地主義の遺産をがっちり守り抜こうとするロイヤル・ダッチ・シェル連合と、新興米国の国力を背景にこれを急追するスタンダード石油とは、当時世界最大だったバクー油田を、革命直後のロシアで取り合うなど、その戦いは中東でも中南米でもアジアでも激しく展開された。 もともと、ロイヤル・ダッチ社とシェル社は別会社であった。ロスチャイルド財閥は、革命前のロシアのバクー油田の利権を持っており、ロスチャイルド財閥がシェル社の極東部門に石油を供給していた。その後しばらくの間、極東アジアにおいては、ロイヤル・ダッチ社とシェル社はライバル関係にある。 しかし、ここに米ロックフェラー財閥のスタンダード石油(現エクソン)という強烈な敵が出現する。そこで、ロスチャイルド財閥が仲介して、ロイヤル・ダッチ社とシェル杜に反スタンダード石油の同盟を組ませた。そのとき設立されたアジア石油会社の株は、ロイヤル・ダッチ社、シェル社、そしてロスチャイルド財閥にそれぞれ三等分され、また取締役会の席も三者に二席ずつ配分された。これが現在のロイヤル・ダッチ・シェル社の出発点である。同社をロスチャイルド財閥の一員と呼ぶゆえんはここにある。 アメリカが国際政治に、一人前のプレーヤーとして登場するのは、セオドア・ルーズベルトが日露戦争の仲介を買って出た「ポーツマス会議」(1905年〈明治38年〉)をもってである。これ以前のアメリカは、ヨーロッパ各国から国際政治上の一人前のプレーヤーとは見られなかった。そして、第一次大戦で疲弊したヨーロッパを横目に、第一次大戦後の世界でアメリカは大国の地位を揺るぎのないものにする。 また、この頃から、ロックフェラー財閥の中枢、スタンダード石油は、「すでに国内の主要油田はすべて発見された。今後は外国での新油田発見だ」との自覚のもとに、アメリカ外での石油利権の新規獲得のために、本格的に乗り出してくる。そして、ロイヤル・ダッチ=シェル連合と世界中で衝突を繰り返すのである。 第二次大戦後は、旧植民地利権に基礎をおくシェルは、超大国として登場したアメリカの力をバックとするエクソンに追い上げられる。しかし、世間で言われるところの「イギリス=大英帝国」の没落・斜陽とは別次元で、シェルやブリティッシュ・ペトロリアム(BP)はむしろ、よくその利権を守ってきたというべきである。 話は別分野になるが、《エクソン 対 シェル》の関係は、ちょうど通信社でいえば《AP 対 ロイター》の関係に似ている。アメリカを代表する通信社のAP。一方、イギリス帝国主義が世界に張り巡らせた情報網の基盤の上に成立しているロイター。ニュースの商人ロイターと、保険会社のロイズこそ、イギリス帝国主義が残した「情報ネットワーク」という遺産を、最もうまく利用した企業であった。近年におけるロイター通信社とロイズ保険の没落こそ、ビジネス面における、大英帝国の凋落を実感させる出来事であった。 コンピューター業界の雄IBMと、通信業界の雄AT&Tが、21世紀の情報通信産業における覇権をかけて激しく戦っていることは、周知の事実である。そしてこの激闘はまた、米保守本流(アングロ・サクソン派)のIBMと、アメリカにありながらシオニスト系の立場を守っているAT&Tの間の、総力戦なのでもあった。AT&Tはアラブ諸国の対イスラエル・ボイコット・リストにも載っている、どこから見ても「シオニスト系」の企業である。 対 AT&T》の対立、また《ペプシコ 対 コカ・コーラ》の対立など、前者がアングロ・サクソン派の米保守本流系、後者がシオニスト(ユダヤ)系であることは、“できる”欧米のビジネスマンの間では常識だし、欧米の財界では、いまさら口に出す必要もないほどの当たり前のことである。また、こういったエスニックなことは差別問題にもつながり、公の場では発言しがたい。 ところが、日本では、相当海外体験を積んだ辣腕のビジネスマンでも、こういった“事実”についてほとんど知らないままである。これでは、日本企業の海外戦略がうまくいくわけがない。事実、冷戦終結後AT&Tのシオニスト寄りの動きが顕著になったことを知らなかったために、日本企業のトップ何人かは、取り返しのつかない過ちを犯している。 1984年にAT&Tの分割がレーガン政権下で決定された。実はこの分割自体が、情報通信産業が発展していく時代において、AT&Tの力を削ぎ落とし、シオニスト系の企業に絶対に次世代の中枢産業における主導権は取らせない、というアメリカ財界保守本流の決意の表われなのであった。 通信産業における国際的競争力を優先させて考えれば、AT&Tのような巨大産業は分割しないほうがいいに決まっている。しかも、ことは通信だけに、全米を一つにつなぐ企業があったほうが力が発揮しやすい。IBM 対 AT&Tの激闘は、単に未来のビッグビジネスの主導権争いにとどまらず、国家神経の中枢であるコンピューター・テレコミュニケーション・システムをどちらが独占するかという、軍事上の天下分け目の決戦でもあった。そうであればこそ、最も保守的であるレーガン政権によって、AT&Tは分割されたのである。 メリルリンチといえば、レーガン政権で首席大統領補佐官と財務長官を務めたドナルド・リーガンが生え抜きとして会長の要職にあった証券会社である。メリルリンチは米証券業界のトップにある保守本流系企業で、日本の野村證券がお手本にしているくらいのパワーがある。 投資銀行のディロン・リードは、反ロスチャイルドで、アメリカ金融業界の王道を歩んだ企業である。最近では、ブッシュ政権の財務長官を務めたニコラス・ブレイディがディロン・リ−ドの生え抜きの会長であった。ちなみにブレイディ家は、米国電力業界の元老的存在である。 ディロン・リードはレーガン政権時代には、カリフォルニアに本拠を持つ建設土木会社ベクテルを大株主に迎えている。ベクテルは石油ブーム時のアラブ諸国から大量に仕事を受注して大儲けしたことからもわかるとおり、《親アラブ=反シオニズム》を明確に打ち出している保守本流系の企業である。カリフォルニア州知事を務めていたレーガンとの縁は深く、レーガン政権へは、シュルツ国務長官、ワインバーガー国防長官を、ベクテル・グループから送り込んでいる。 ちなみにディロン・リードは、1992年には、英国アングロ・サクソン系投資銀行の雄ベアリングを40%の大株主として迎え、史上最強の「アンチ・ロスチャイルド同盟」を結成して今日に至っている。イギリスのS・G・ワーバーグ証券は、アンチ・ロスチャイルドだったユダヤ系ワーバーグ家のヨーロッパにおける生残り。ワーバーグについては、次項に詳述しよう。 モルガン・スタンレーは、根はシオニスト派のモルガンだが、現在は次項に解説する米保守本流派ケミカル銀行の金融系列に入っている投資銀行である。 米シオニスト系では、ゴールドマン・サックスが有名。同行の創設者がユダヤ人であるだけでなく、前回の米大統領選の際の立場もシオニスト系であった。ゴールドマン・サックスは会社を挙げてクリントン候補を応援し、ロバート・ルービン会長を、クリントン政権に送り込んでいる。役職は新設の国家経済安全保障会議議長であった。 チェース・マンハッタン銀行は、ロックフェラー財団の経理部的存在である。一方、ケミカル銀行は、ブッシュ政権の大黒柱のジェームズ・ベーカー元財務長官を擁していた銀行で、やはりチェースと組んで、「アンチ・ロスチャイルド連合」を形成する米保守本流派である。 注意すべきは、モルガン財閥が、歴史的に、英ロスチャイルドのアメリカにおける代理人=同盟者として機能してきたことだ。 モルガン財閥といえばユダヤ人ではなく、ロックフェラー財閥に並ぶ名門財閥で、アメリカにおけるキリスト教的なエスタブリッシュメントの一角を形づくっていることは間違いない。これはペトロダラーの還流に、ユダヤ嫌いのアラブ富豪たちが、モルガンとつきあいがあったことからもわかる。しかし、ロックフェラー財閥と対抗しつつ、モルガン財閥はロスチャイルドと同盟関係を組んできた。 単にある財閥がユダヤ系だから、即「シオニスト」(イスラエル至上主義者)とは限らないし、ある財閥がキリスト教系だから、「アンチ・シオニスト」で「アンチ・ロスチャイルド」と決まったわけではない。ここのところがわからないと、重要なポイントを見誤ることになる。 説明しよう。ユダヤ人ヤコブ・シフの率いる「クーン・ローブ商会」といえば、日露戦争のときに日本の国債を大量に引き受けてくれた話が有名であり、日本とも縁が深い。シフは帝政ロシアでユダヤ人が抑圧されている現状を憂いて、日本にも同情的立場をとり、高橋是清の説得に応じ、危険度の高かった日本の国債を大量に引き受けてくれたのだ、と言われている。 このクーン・ローブ商会が19世紀の後半から20世紀の初頭にかけて、ウォール・ストリートで対決していたのが、モルガン商会なのであった。そして背後では、それぞれ、米ロックフェラー財閥が、クーン・ローブ商会を支援し、英ロスチャイルド財閥がモルガン商会を支援していた。つまり《米ロックフェラー 対 英ロスチャイルド》の、アメリカ金融界における代理戦争が、《クーン・ローブ商会 対 モルガン商会》の対立だったのである。 プロテスタント(すなわちキリスト教)系とユダヤ系の提携関係が、タスキがけになっているところがミソだ。そういえばちょっと前、永田町でのはやり言葉に“ねじれ”関係というのがあった。 鉄道で有名なハリマン家(米プロテスタント系)、ベアリング家(英プロテスタント系)、ワーバーグ家(独ユダヤ系)もまた、《ロックフェラー=クーン・ローブ》連合側に与していたのである。独ワーバーグは、クーン・ローブ商会の紹介で高橋是清に会い、日本国債を引き受けている。 最近、日本で出版されたロスチャイルド家を扱った本では、ワーバーグ家をロスチャイルドの子分のように扱っているが、これは誤りである。後年ロスチャイルド家との間に縁戚関係も生ずるが、初代のマックス・ワーバーグは若い頃、パリのロスチャイルド銀行に従弟奉公したゆえに、逆に明確に「アンチ・ロスチャイルド」であり、国際ユダヤ(祖国を持たずシオニズムにコミットメントする)を嫌い、生まれ故郷のドイツ愛国派を貫いた尊敬すべき人物であった。マックス・ワーバーグの二人の弟は、クーン・ローブを率いるヤコブ・シフと姻戚関係を結んでいる。 《ロックフェラー 対 ロスチャイルド》の対決が、現在の石油業界で、《エクソン 対 シェル》の対決となって現われているように、20世紀初頭の米金融業界(ウォール・ストリート)では、《クーン・ローブ 対 モルガン》の死闘となって現われていたのであった。米モルガン財閥が英ロスチャイルド財閥の同盟者であることを押さえておくことは、きわめて重要である。 またスタンダード・チャータード銀行は、冷戦中は、英ロスチャイルド寄りで、いまでも、香港において通貨(香港ドル)の発行権を持つ2つの銀行の1つであり、香港においては、ロックフェラー寄りの旗色を鮮明にした香港・上海銀行と対立している。 アライド・シグナル社は、いくつもの保守本流系の化学会社の合併によってつくられた。まさに連合(アライド=Alied )会社。デュポンは著名な化学企業だが、元来はフランスのユグノー系(新教徒)のファミリーがアメリカのデラウェア州で興した会社。南北戦争の火薬製造で財をなした。 カトリック社会であるフランスで新教徒(ユグノー)は、ユダヤ人と似た立場にあり、大量虐殺にも遭遇している。現在、デュポン社の株の4分の1は、カナダ・アメリカのユダヤ系財閥ブロンフマン家によって所有されている。ブロンフマン家は、シーグラム・ウィスキーを中核とする財閥である。ユダヤのブロンフマンもユグノーのデュポンも、近年は、ともにシオニスト的な動きが目立った。 GEは発電機、ジェット・エンジン、工業用プラスチックからエレクトロニクス、家電製品まで手掛ける総合電機メーカーで、アメリカの製造業の強さを代表するような企業である。GEは、最近、中国・東南アジア・インドを最大の成長市場と見て、猛烈な勢いでアジア市場を攻めまくっている。 オランダから生まれ全ヨーロッパ的な電機産業になったのが、フィリップスであるが、冷戦終結後は、米AT&Tと組んでの世界戦略を追求したために、一時、非常に苦しんだ。 世界最大の自動車会社GMが、米製造業の中核であることは当然だが、政治的にも、IBMやGEと並び米保守本流財界の中枢を構成する。 GMと対抗するフォードは、フォード1世(ヘンリー・フォード)がヒトラーに資金援助したことなどから、第二次大戦後、逆にシオニストに頭が上がらなくなってしまった。 1980年代にGM傘下に入ったヒューズ・エアクラフトは、人工衛星で抜群の実力を誇る。湾岸戦争で活躍したパトリオット・ミサイルの製造元のマーチン・マリエッタ社も、米航空宇宙産業の主柱の一つの保守本流の企業だ。マーチン・マリエッタは、最近(1994年3月)、かつての名門グラマン社買収の意向も発表した。 ゼネラル・ダイナミックスは、戦闘機部門や衛星打上げ部門を切り離してリストラを進めながらも、国防産業としてサバイバルできそうな原潜メーカーの保守本流である。 ジャンボ機の製造元で、民間航空機に圧倒的に強いボーイング社も、その部門では、押しも押されもしない保守本流企業である。 フランスのダッソー(ミラージュ戦闘機を生産)はユダヤ=シオニスト系として有名で、その背景に米GMに対立するフランスの自動車会社ルノーを持つ。米航空宇宙産業と対立してきた英ブリティッシュ・エアロスペースの動きも、広義におけるシオニスト系と言えるだろう。 GMヒューズ、マーチン・マリエッタ、ゼネラル・ダイナミックス、レイセオン、ボーイングなどは、アメリカの航空・宇宙・防衛産業の中核をなす保守本流系企業である。一方、これと対抗するロッキード、マクダネル・ダグラス、ローラル(フォードの航空宇宙部門を買った)などは、シオニスト的な動きが目立ち、前者との対決姿勢を非常に鮮明にしていた。 田中角栄元首相は、ロッキードからのキックバックを受けたがゆえに失脚した。これがゼネラル・ダイナミックスやIBMからの献金だったら、アメリカで政治問題化することはなかったとも考えられる。政治的に保守傍流からの金であったために、のちに問題化したのである。 ロイター通信社の創設者ユーリウス・ロイター(1816〜99年)は、プロイセン(現在はドイツ)で、ユダヤ人家庭の三男として生まれた。生名はイスラエル・ビアー。のちにイギリスに渡り、キリスト教徒に改宗し、名前もロイターと改めるのである。 ロイターとロスチャイルドの縁は深い。ワーテルローの戦いでのイギリス勝利の情報をいち早くつかみ、英国国債への投機で大儲けしたといわれるのが、ネイサン・ロスチャイルドであった。そしてこのネイサンの息子ラヨネル・ド・ロスチャイルドが、ロイター通信社の最初のクライアントの一人であった。それ以後、ロスチャイルドとロイターはお互いに不可欠のパートナーとして二人三脚を続けていくことになる。 “ペプシ・コーラ”は米保守本流で、“コカ・コーラ”がユダヤ=シオニスト系というのも面白い。ペプシのケンドール会長は共和党支持の財界人で、ニクソン大統領と親しく、ニクソン政権下の第一次デタントでは、ペプシはソ連市場に独占的に参入した。コカ・コーラは伝統的に「シオニスト=リベラル=民主党」支持の企業である。 アラブ世界でもこのことはよく認知しており、コカ・コーラはアラブ諸国による対イスラエル・ボイコット・リストの筆頭的存在であった。 NBCテレビはGEの小会社なので、保守的だが、他の二大TVネットワークに比べて力が弱い、とシオニスト系の調査機関から言われている。一方、『ウォール・ストリート・ジャーナル』はアメリカを代表する日刊経済紙。『ウォール・ストリート・ジャーナル』を発行するダウ・ジョーンズ社にはユダヤ系の大株主もいるが、同紙自身は、米財界のフォーラム的機能を持っており、保守本流財界の立場に近い編集方針である。ニュース週刊誌のなかでは、日本であまり知られていない『USニューズ&ワールド・リポート』が保守本流的編集方針で、情報の質もよい。 シオニスト系でも「タカ派=保守派」の主張はありうるが、ここでシオニスト系として紹介したのは、いずれも《民主党=リベラル》的なマスコミだ。ABCテレビもCBSテレビも、リベラルでイスラエル支持(シオニスト)的論調は一貫している。 『ニューヨーク・タイムズ』はオークス家、ザルツバーガー家という2つのユダヤ系家族によってコントロールされているファミリー・ビジネスで、典型的な《民主党=リベラル》的な編集方針である。『ワシントン・ポスト』は同様にグラハム家(ユージン・マイヤー家)のファミリー・ビジネスであり、同社の社主を長年務めたキャサリン・グラハム女史は、昨年引退した。 『ニューヨーク・タイムズ』紙は日刊発行部数約100万部、『ワシントン・ポスト』紙は約80万部と日本の大新聞(たとえば『読売新聞』は約1000万部)に比べれば、小さな新聞であるが、インテリヘの影響力やテレビとの連携を通じて、きわめて大きな世論形成力を持っていると自負している。日本語版も発行されているニュース週刊誌『ニューズウィーク』は、『ワシントン・ポスト』の100%子会社が発行している。 アメリカ財界全体を見渡してみると、大雑把にいって、「保守本流派」は製造業に強く、「シオニスト派」はマスコミに強い(ただし、広告主は前者である)。ユダヤ人は伝統的に、金融・流通・知的職業(医師・弁護士・学者・芸術家など)には強かったが、農業や製造業には弱かった。ユダヤ人迫害があったときに、いつでも全財産を持って逃げ出せるような職業に就いたからである。農業や製造業を始めてしまったら、土地に縛りつけられてしまうことになる。 アメリカにおいても後発移民であったユダヤ系市民は、製造業の根幹に(研究者として以外は)ほとんど入り込めなかったし、入り込もうともしなかった。しかし、保守本流財界がそれほど重視していなかった、マスメディアの世界には早くから参入し、そこでユダヤ人の強みである語学能力や芸術的才能を、遺憾なく発揮した。映画や音楽も含めたマスコミは、シオニスト・ユダヤたちの圧倒的に強い領域となってしまった。 ユダヤ人は、キリスト教徒が主流のヨーロッパでもアメリカでも、宗教的かつ文化的にマイノリティー(少数派)だったから、当然マイノリティーの権利を重んずるリベラルで人権主義的な思想を鼓吹した。そして、各国の保守本流が伝統思想をがっちり守っていくような社会では、異教徒の自分たちが受け入れられないし、迫害されやすいので、自然と、コスモポリタン(世界市民)的で、アンチ伝統的なリベラルな思想を支持し、それを流布しようとした。 このため、アメリカでは、マスコミで主流となるオピニオンは、著しくユダヤ的=シオニスト的であり、それは同時にリベラルである。またそれは、財界保守本流の保守的オピニオンとは、真っ向から対立することが多い。『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』を読み、ABCテレビやCBSテレビを見ていたのでは、アメリカ財界保守本流の考えは、まったくと言っていいほどわからないのである。 1992年のアメリカ大統領選挙においても、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』は、民主党のクリントンを支持すると公然と社説で明言した。しかし、選挙直前の段階で全米の大企業500社のトップの約7割はブッシュ支持であったし、中小企業経営者の約3分の2もブッシュ支持であった。国益がどこにあるかはっきりとわかっていたのである。 振り返ってみれば、アングロ・サクソン的質実剛健な気質が製造業を支え、ユダヤ的な気質がマスコミ・文化方面で開花したとも言えようか。保守本流とシオニストの間の対立とは、究極的に、このような歴史的環境の隔たりから生じたものと言える。 財界保守本流の考えと、シオニストの影響力の強いマスコミの論調には、非常に大きな隔たりがある。この事実が分からないと、アメリカという国を大きく見誤ることになる。 アメリカ最大最強の保守本流(WASP=ワスプ)派のロックフェラー財閥は、イギリス最大最強のシオニスト派のロスチャイルド財閥を相手に、過去半世紀以上にわたって、熾烈な戦いを繰り広げてきた。 もちろん、イギリス国内に米保守本流の仲間もおり、アメリカ国内にも英シオニストの同盟者はいる。しかし、《米ロックフェラー派 対 英ロスチャイルド派》の対立の深刻さがわかると、英米は「特殊関係」で仲がよいどころか、英米関係とは、実は骨肉相喰む、とんでもない喧嘩兄弟であることがわかるのだ。 「英米がともにアングロ・サクソン国家で仲がよい」などというのは、とてつもなく浅薄な理解であり、そんなことでは、歴史の真相は理解できない。ましてや、ビジネスに役立つ国際情勢の予測など、できるはずもない。 アメリカとはそもそも、イギリス帝国主義支配やロスチャイルド家支配を嫌って生まれた国なのである。しかし、イギリスは《ロスチャイルド=モルガン》金融枢軸を中心に、経済的にアメリカを支配しようとするばかりでなく、シオニストのマスコミ・コネクションを通じて、アメリカ人に対英コンプレックスを植え付け続けてきたのである。ビートルズもローズ奨学金(クリントン大統領もその一員)も、その好例であろう。 現在アメリカは、イギリスを相手に最後の独立戦争を戦っており、勝利を収めつつある。冷戦終結が明らかになった1988年から現在までの英米関係とは、一言でその真の姿を要約すれば、アメリカの対英・独立戦争の最後の一大決戦だったのである。「ロックフェラー 対 ロスチャイルド戦争」は、アメリカの対イギリス「独立戦争」の継続でもあったのだ。アメリカ政財界保守本流は、イギリス帝国主義の旗を掲げたシオニスト=ユダヤ(ロスチャイルド)の呪縛を逃れようと、必死に奪闘してきた。そして、その目的はいまや達成されつつある。 この観点から見ると、第一次大戦も第二次大戦も、イギリス(兄)とアメリカ(弟)の間の、骨肉の争いであった。 そう言われると驚く人が大部分だろう。しかしアメリカは、意識しようが意識しまいが、どちらの世界大戦においても、イギリスが敗戦の瀬戸際に追い込まれて、借金漬けになり、土下座して頼みに来るまで参戦しなかった。しかもイギリスの敵側にも堂々と物資を売っていたのである。大義名分はモンロー主義という中立主義であった。 1929年に始まる「大恐慌」の真因も、欧米の対立関係に深く起因している。第一次大戦後のアメリカ経済は、崩壊したヨーロッパ経済の生産力を補うために、その生産力を著しく膨張させた。ところが、戦場の焼け跡からヨーロッパ経済がやっと復興してくると、今度は、ヨーロッパからの戦争特需・復興特需で規模が拡大していたアメリカ経済は、生産過剰になり、その生産力のはけ口が見つからなくなった。この不均衡(アンバランス)の結末があの「大恐慌」なのである。 戦争特需のあとに大不況がくるのは、ほとんど経済法則といってよいほどである。第一次大戦後は、戦争特需の規模も大きかったし、その分、山高ければ谷深しの諺(ことわざ)のように、反動の不況の規模も大きかった。しかも当時は、政府や中央銀行の政策手段が十分発達していなかったし、加えて、各国当局者間の政策協調も今日から見れば、無に等しかった。そのためにこの大不況への対処のしようがなかったのである。 いわゆる「大恐慌」の真の原因は、アメリカ経済とヨーロッパ経済の葛藤に基づく、こんな単純な話なのだが、世の有名なエコノミストの書いた本によれば、この「大恐慌」の原因は、いまだによくわからないことになっているそうである。おかしな話である。単純な話を、わかりづらくすることが、どうやら世の中で学者といわれている人々の仕事のようだ。本来の学問の役割とは、まさにその逆であり、複雑な事柄の本質を、単純明快に説明することにある。 さて、その「大恐慌」が遠い、しかし根本的な原因になり、第二次大戦を引き起こすことになる。打ち続く不況が、「持たざる国」日・独・伊を窮地に追い込んだのであった。 この第二次大戦においては、アメリカは再びイギリスが疲弊しきるまで参戦しようとはしなかった。そしてアメリカが意識しようがしまいが、ヨーロッパではドイツを当て馬にして、イギリスを叩かせ、アジアでは日本を当て馬にして大英帝国を追い出し、大戦後は、そのアジアの利権の一部を獲得したのだった。 表向きは、兄(イギリス)の仇を討つ弟(アメリカ)の役で格好はよかった。しかし内実は巨大利権の奪い合いであり、英帝国主義から米帝国主義への移行であった。 戦後日本の占領政策において、イギリスは天皇の戦争責任追及などで対日批判が厳しく、アメリカは緩やかであった。アメリカは、日本をアメリカのよきジュニア・パートナー(子分)として育成しようとしていた。対日感情に見るこの英米の違いは、アメリカが日本を当て馬にして、イギリスをアジアから追い出そうとしたところに起因しているのであろう。 日独に対する英米の態度が違ってくるのも、当然といえば当然なのである。筆者はなにも、アメリカがすべてを計画的に、このようなことを行なったとは決して思っていない。しかし結果的にはそうなっているのだ。 英米は、これまで世界の覇権をかけて熾烈な死闘を繰り返してきた。大英帝国の植民地利権は2つの世界大戦で完全に崩壊してしまったわけではなかった。米ソ冷戦終結後の世界再編で、大英帝国の利権は初めて根元からアメリカに奪取されたのであった。香港・南アフリカ・シンガポール・マレーシアの利権は、今回、初めて、アメリカの手中に落ちたのであった。 1992年の初頭に訪日したブッシュ・アメリカ大統領(当時)は、宴会の席上で倒れ、日米の関係者をヒヤリとさせた。このことは多くの読者が記憶しているものだろう。しかし、実は来日の前に非常に重要な行動をとっていたのだが、こちらの行動に対しては、日本ではその外交的な意義を認識した人々はほとんどなかったようだ。 ブッシュ大統領は、訪日前にシンガポールを訪問したのである。日本に来たのは、貿易摩擦をどうするかという目先の問題にすぎず、長い歴史的パースペクティヴで見ると、シンガポール訪問のほうが、はるかに重要である。 シンガポールは、地政学的に考えても、東南アジアの重要なポイントである。目の前に東西交通の要衝マラッカ海峡があり、後ろには石油・ガス産出国のマレーシアを控える貿易港としても軍事的キーポイントとしても重要であり、香港とともにイギリスの東南アジア経営の核心部分であった。 そのシンガポールヘ、歴史上初めて、アメリカ大統領が乗り込んだのである。それまではイギリスの東南アジア支配の牙城であり、アメリカ大統領の入国は認められなかったのである。シンガポールは、南アフリカやクウェートや香港と並び第二次大戦後も残った、イギリスにとっては貴重な植民地支配の権益拠点なのである。これらの拠点に、相次いでアメリカがクサビを打ち込んでいる。 たとえば、クウェートは、地元のアラブの族長たちをイギリスがおだてて、背後から支援して、無理やりイラクから分離独立させた国であった。イラクが、クウェートを元来が自分の国だ、と訴えるのも、まったく根拠がないわけではない。 ところが、湾岸戦争ではアメリカ軍が主力となってクウェートをイラク軍から奪還したために、クウェート復興の総元締めはアメリカ工兵部隊になり、その復興特需の8割はアメリカ企業の手に落ちてしまった。湾岸戦争を契機に、クウェートの利権はイギリスからアメリカに移ったのである。 アメリカ財界保守本流からすれば、アメリカ国内で、第三世界開発を鼓舞するような、またアラブ・イスラエル紛争の解決を求めるような世論を大いに喚起したいところだ。ところが、マスコミで大きな力を握っているシオニスト(イスラエル至上主義者)の連中が、こういった前向きのオピニオンの広がりを非常に意図的に妨害しているのだ。 アラブ・イスラエル紛争自体も、かなりアメリカ大衆を感情的に紛糾させるべく、シオニストたちによって煽動されている。もちろん、アメリカの大多数を占める白人中産階級のクリスチャンたちが、イスラエルに同情的になるように、アラブ人=イスラム教徒=第三世界に対して憎悪を抱くように、マスコミを通じて情報操作がされているのである。 アメリカには約600万人のユダヤ系市民が存在する。彼らはマスコミ、芸能界、医学界、大学、金融界、小売業などのかなりの部分に浸透し、強力なシオニスト・コネクションを構成する。政府に対し働きかけるロビー活動の中心は「アメリカ・イスラエル広報委員会」(AIPAC)である。イスラエル批判をしたがために選挙で落選させられた政治家は、ブッシュ前大統領や、チャールズ・パーシー元上院議員をはじめとして、かなりの数にのぼる。対立候補にイスラエルヘの忠誠を誓う候補を立て、その人物に資金やボランティアやマスコミの関心を集中させ、反イスラエルの候補には「ナチの再来」などの非難を浴びせて落選させるのである。 シオニストは政府や社会ばかりでなく、マスコミを通じて、一般アメリカ国民に「反アラブ=反第三世界感情」を注入してきた。シオニストがアメリカ国民に、映画・音楽・小説・新聞・TVなどのさまざまなメディアを使って繰り返し訴えてきたのは、以下のようなメッセージだ。 すなわち、「ユダヤ文化は西洋文明をつくってきた不可欠の要素であり、《ユダヤ教=キリスト教》の伝統というのは、ヨーロッパの精神的な枢軸である。そのユダヤ人が中東にイスラエルという国家を復興したということは、ヨーロッパ文明の中軸に属する国が、たまたま中東にできたということである。西洋文明の一翼を担うイスラエルという国家を、アメリカやその他のヨーロッパ諸国が支持するのは当たり前ではないか。まして、我々は、ナチスによるホロコースト(民族虐殺)という酷い体験をしているので、ユダヤ国家を欧米諸国は保護する道徳的義務がある。」 ついでながら、「ホロコースト」はユダヤ=シオニストの切り札的シンボルだ。最近ではスピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』が、この切り札を使っている。ユダヤ人であるスピルバーグ監督のイスラエルヘのエールであろう。ちなみに、イスラエルが内外のプレッシャーの下で和平に踏み出した1993年という年にこの映画は製作されている。 「イスラム世界に代表されるような第三世界は、文化的にも文明的にも、我々とまったく相入れない存在である。イスラエルは、過激なイスラム原理主義の防波堤としても機能しているのであり、欧米がイスラエルを全面支持するのは、この点からもなおさら、当然である。」 なお、冷戦時代においては、アラブの背後にはソ連がおり、「中東におけるソ連の影響力を封じ込めるために、イスラエルが頑張っている」という支持理由もあった。 つまり、かなり非欧米人を人種的に差別するようなオピニオンを、シオニストたちは一般アメリカ国民にアピールし続けてきた。それゆえ、一般アメリカ国民はアラブ・イスラエル紛争を《我々(ユダヤ教徒+キリスト教徒) 対 彼ら(アラブ人+イスラム教徒+第三世界)》のシンボリックな戦いととらえ、かなり感情的に反応する。 このような文化論的な「反第三世界論」に加えて、もっと経済的な「反第三世界論」も喧伝されている。第三世界の経済が発展すると、低賃金による輸出により、自分たちの職が奪われ、自分たちの生活水準が引き下げられるのではないか、という恐怖感が、多くの大衆の心の底にある。これは、シオニストのみならず、多くの「草の根保守層」の人々によっても主張されている。 たとえば、1992年の共和党の大統領予備選に出馬したパット・ブキャナン候補などは、こういったトレンドを代表する政治家であった。ブキャナンは、次のような、ジョークともとれるようなブッシュ批判を繰り返した。すなわち、「1988年にジョージ・ブッシュ氏は何百万もの新たな雇用を創出すると約束したし、それは実現した。しかし、その雇用はメキシコや広東省や韓国やマレーシアなど、アメリカとはおよそ関係のないところでのものだった」 このジョーク自体が、現在多くのアメリカ人が自分たちと第三世界との関係をどのように考えているかを、最もよく表わしている。彼らの多くは、第三世界の経済発展が、自らの特権を奪うのではないかと恐れ、苛立っているのだ。 筆者は、第三世界を取り込み、世界経済を真に一体化することなしに、そして、世界経済の「血行」をよくすることなしに、今日のあらゆる経済問題は解決しえないと考えている。このような思考を「グローバリズム」と呼ぶ。そして、そのまったく反対に、前記のような恐怖感を背景に、世界経済の一体化に反対する考え方を「アンチ・グローバリズム」と呼ぶ。 米財界保守本流派は間違いなく「グローバリスト」であり、シオニスト派は「アンチ・グローバリスト」なのである。 1992年の米大統領選では、ブッシュは明確にグローバリストであり、米保守本流財界の支持を得ており、クリントンはアンチ・グローバリストでシオニスト財界の支持を得ていた。そして人々の経済不安心理を煽ったクリントンが、シオニスト・マスコミの全面援助を得て当選したのである。 実は日本叩き(ジャパン・バッシング)の心理的基礎もアメリカ人の「アンチ・グローバリズム」「反第三世界感情」と深く関連している。この点を理解しないと、日本が国内市場を外国に開放している、まさにそのときに、なにゆえ日本がこれほどバッシングを受けざるをえないのか、まったく理解できない。 日本は、「経済力をつけ、アメリカの労働者を失業に追い込もうとしている、非欧米世界の先頭を走っている脅威的存在」とアメリカ人労働者に見られているのだ。 日本のあとには、東アジアのNIESが続き、さらにそのあとには12億の人口を擁する中国が、8億の人口を擁するインドが控えている。これら諸国の労働者が、アメリカ人労働者の雇用を奪おうとしている。そのように、アメリカのアンチ・グローバリストたちはとらえている。ユダヤ・アラブ紛争とは、いちおう切り離された問題ではあるが、この分野でも、シオニスト=ユダヤ人たちが、無意識的にせよ、非常にアンチ・グローバリズムの管理貿易的な論者の中心となっている。 クリントン政権で見ると、ロバート・ライシュ労働長官(元ハーバード大学教授)、ローレンス・サマーズ財務次官(元ハーバード大学教授)、ミッキー・カンター通商代表(元ロビイスト)、また彼らの応援団といった存在のジェフリー・サックス・ハーバード大学教授など、みなユダヤ系の人物であり、《シオニズム→アンチ・グローバリズム→管理貿易》という思考形態を共通項にしているようである。 「サマーズ米財務次官は繰り返し『日本の貿易黒字は、百万人から二百万人の雇用を他国から奪っている』と批判する。聞きようによっては、円高で日本は百万から二百万人の失業を甘受すべし、という極論になる。失業という負のカードの押しつけ合いだ。」 彼らユダヤ人=シオニスト的な人々の、対日主張を要約してみよう。それは「雇用・賃金ナショナリズム」とでもいうべき「一国繁栄主義」の主張である。彼らの言わんとしているところを、露骨な言い方で表現すれば、次のようになるだろう。 【3】 いままで「生産センター」であった日本は、今度は世界の「消費センター」になり、アメリカ(はもとより他国)の輸出をどんどん受け入れよ。アメリカは貿易赤字解消、日本は貿易黒字解消。 【4】 日本の輸入を拡大するために、日本政府は大幅減税を行ない、国内消費を喚起せよ。日本政府が財政赤字になっても、アメリカはかまわない。それこそ世界への貢献だ。 簡単ではあるが、戦前、昭和初年代の《政友会 対 民政党》の二大政党制が、国際舞台における《米ロックフェラー財閥 対 英ロスチャイルド財閥》の対立と密接に結びついていた事実を指摘しておきたい。 これは、「政友会・田中義一内閣」(昭和2〜4年)の大蔵大臣・高橋是清と、「民政党・浜口雄幸内閣」(昭和4〜6年)の大蔵大臣・井上準之助を比較してみるとよくわかる。国内的には当時、三井財閥が政友会を財政支援しているのは周知の事実であった(浜口首相は三菱の岩崎弥太郎と同じ土佐出身)。 高橋是清は日露戦争の外債を「クーン・ローブ商会」のヤコブ・シフに引き受けてもらって以来、シフとは家族ぐるみのつきあいだった。ドイツのユダヤ系財閥で、アンチ・ロスチャイルドのワーバーグ家が、ヤコブ・シフと親しかったことはすでに述べた。高橋是清も当然ワーバーグ家と親しかった。ワーバーグも日露戦争の日本の外債を引き受けてくれている。三井財閥もワーバーグ財閥と親しくしている。 そして金融界では、《独ワーバーグ=米クーン・ローブ連合》を米ロックフェラー財閥が支援し、これと相対立するのが、《米モルガン=英ロスチャイルド連合》であった。ウォール・ストリートの対立では、《独ワーバーグ(ユダヤ)=米クーン・ローブ(ユダヤ)》 一方、民政党の井上準之助は、関東大震災復興の外債募集でモルガンの番頭トマス・ラモントに国際金融家として認められ、ラモントの指導の下に金解禁政策を実施することになる。 つまり、《民政党=三菱財閥=井上準之助蔵相=米モルガン財閥=英ロスチャイルド財閥》の流れと、《政友会=三井財閥=高橋是清蔵相=米クーン・ローブ商会・独ワーバーグ商会=米ロックフェラー財閥》という流れが、国の内外を貫いて対立していたのである。 ごく単純化して言えば、戦前日本の《政友会 対 民政党》の二大政党制とは、《米ロックフェラー 対 英ロスチャイルド》の日本における代理戦争だったのである。現代アメリカ政治との比較でいえば、「共和党=政友会」「民主党=民政党」のイメージもわいてくる。 このようにして初めて、政友会の田中積極外交と民政党の幣原協調外交の国際関係における深い意味も分かってくるであろう。そして、このような国際関係の視座から見ると、戦前の政治史・経済史の本質もまったく異なった相貌を見せてくる。 ●さて、藤井氏の本を長々と紹介してきたわけであるが、当館はこの本の内容について多少異なる見解を持っている。(各業界の区分は変動しているので仕方ない)。 例えば、藤井氏は「フォード社」を、親ロスチャイルドの陣営に入れている。その理由は、「フォード1世(ヘンリー・フォード)がヒトラーに資金援助したことなどから、第二次大戦後、逆にシオニストに頭が上がらなくなってしまった」からだという。しかし当館は、現在の「フォード社」は「米保守本流=親ロックフェラー財閥系」だと考えている。 また、藤井氏は「三菱」を親ロスチャイルド陣営、「三井」を親ロックフェラー陣営に分類しているが、当館は逆に考えている。「三菱」は親ロックフェラー陣営、「三井」は親ロスチャイルド陣営だと考えている。この件に関しては、次に紹介予定の副島隆彦氏が、より正確な分析をしているように思われる。 ●あと、「全米ユダヤ人協会」の会長を務めたヤコブ・シフは、「日露戦争」の時に日本の国債を大量に引き受け、日本をサポートしてくれたが、彼が「クーン・ローブ商会」の経営権を手に入れるときの資金は、ロスチャイルド家から提供されたものだったと言われている。それほど、ヤコブ・シフとロスチャイルド・ファミリーは深い関係にあった。藤井氏は「クーン・ローブ商会」をロックフェラー陣営に分類しているようだが、「クーン・ローブ商会」はロスチャイルド陣営だと考えるのが自然だと思われる。 (※ このヤコブ・シフが日本をサポートしてくれたという話(美談?)は、司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』(文芸春秋)の第4巻で紹介されているので、知っている方は多いだろう)。 ●ちなみに、日本政府は、「日露戦争」勝利の功績に報いるため、1906年にヤコブ・シフを日本に招待し、明治天皇が午餐会を催し、シフ夫妻を拝謁。「勲一等旭日大綬章」という勲章を与えている。 ※ このヤコブ・シフは、「クーン・ローブ商会」から2000万ドルもの巨費を「ロシア革命」に提供したばかりか、革命後のスターリンによる「第1次5ヵ年計画」も支援していたといわれているが、大恐慌後は、「クーン・ローブ商会」は支配力を次第に失い、現在は同じドイツ・ユダヤ系の投資銀行「リーマン・ブラザーズ社」と合併している。 ※ この「リーマン・ブラザーズ社」はドイツからアメリカへ移民したユダヤ人のヘンリーとエマニュエルとマイヤーのリーマン3兄弟によって、1850年に設立された投資銀行である。日露戦争中に、ヤコブ・シフの呼びかけに応じて、日本の国債を購入している。 ●あと、藤井氏の本で気になるのは、彼がアメリカの「グローバリズム」を積極的に支持している点である。当館は、アメリカの「グローバリズム」に対しては非常に懐疑的である。 ●他にも疑問点は幾つかあるが、この本は、「英米の対立」については、非常に優れた分析をしている本だと思う。 例えば、藤井氏は、上の文章の中で、「同じ戦勝国といっても、イギリスは喪失し、アメリカは獲得したのであった」と述べているが、実際、イギリスは2度の世界大戦に勝ちながら衰退していった。2度の世界大戦でいずれも勝利したのに、イギリスは敗戦同様の目にあった。領土は増えるどころか大幅に減り、賠償金はほとんど入らず、失業は増え、経済は停滞した。勝利のおいしいところは全てアメリカに持っていかれた。 イギリスは第二次世界大戦で国力を疲弊させただけでなく、インドを始めビルマ、シンガポールなどの植民地を全て手放すこととなった。こうして世界最大の大英帝国はあっけなく消滅してしまった。大英帝国の消滅はソ連邦の消滅ほど劇的ではなかった。いかにもイギリスらしくゆっくり消えていったのであまり目立たなかった。 ちなみに日本は、戦争に負けたけれども、太平洋地域での日本の白人覇権に対する挑戦は、「白人植民地の総退場」という結果を生み、日本の戦争目的は果たされることとなったのである。これはちょうどイギリスの場合と逆であった。 ●イギリスの有名な世界的歴史学者アーノルド・トインビー博士は、第二次世界大戦で果たした日本の功績について次のように述べている。 「第二次世界大戦において、日本人は日本のためというよりも、むしろ戦争によって利益を得た国々のために、偉大なる歴史を残したと言わねばならない。その国々とは、日本の掲げた短命な理想であった大東亜共栄圏に含まれていた国々である。日本人が歴史上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前において、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が、過去200年の間に考えられていたような、不敗の半神でないことを明らかに示した点にある。」 (1956年10月28日、英紙『オブザーバー』) 「イギリスの最新最良の戦艦2隻が日本軍の飛行機によって撃沈されたことは、特別にセンセーションを巻き起こす出来事であった。それはまた永続的な重要性を持つ出来事でもあった。なぜなら1840年のアヘン戦争以来、東アジアにおけるイギリスの力は、この地域における西洋全体の支配を象徴していたからである。1941年、日本はすべての非西洋国民に対し、西洋は無敵でないことを決定的に示した。この啓示が有色人種の志気に及ぼした恒久的な影響は絶大であった。」 (1968年3月22日『毎日新聞』) ●第二次世界大戦後、多くを失ったイギリスが再生の旗印に掲げたのは「福祉国家」であった。が、大戦後の世界経済はかつてみられないほどの成長を記録し、福祉国家政策を採用したイギリスは、この劇的な成長の波に乗る機会を逸し、イギリスはこの時以降、相対的な衰亡ではなく、絶対的な衰亡の道を辿ることとなった。 この決定的な「英国病」を一層高進させたのが保守党と労働党との二大政党制である。この2つの政党の政策に差がありすぎるので、政権交替の都度、政策がガラリと変わり、安定した長期企業計画なぞ不可能になったのである。 「20世紀も終わりに近づいて、無数の独立国ができたが、それは全部日本の真似であった。これらの独立国の共通点は、全部自分たちで政治をやりたいということ、そして外国の優れた技術、制度、法律をいれようということであり、それは日本の明治維新の真似である。だから、20世紀に本当に政治的に成功したのは日本だろう。」 ●また、アメリカのコロラド大学教授であるジョイス・C・レブラ女史も、著書『東南アジアの解放と日本の遺産』の中で、次のように述べている。 「日本の敗戦、それはもちろん、東南アジア全域の独立運動には決定的な意味を持っていた。日本による占領下で、民族主義、独立要求はもはや引き返せないところまで進んでしまったということをイギリス・オランダは戦後になって思い知ることになるのである。 さらに日本は独立運動を力づけ、民族主義に武器を与えた。日本軍敗走の跡には、二度と外国支配は許すまいという自信と、その自信を裏付ける手段とが、残ったのである。」 「日露戦争と大東亜戦争──。この二つの捨て身の戦争が歴史を転換し、アジア諸民族の独立をもたらした。この意義は、いくら強調しても強調しすぎることはない。 大東亜戦争で日本は敗れたというが、敗けたのはむしろイギリスをはじめとする植民地を持った欧米諸国であった。彼らはこの戦争によって植民地をすべて失ったではないか。戦争に勝ったか敗けたかは、戦争目的を達成したかどうかによって決まる、というのはクラウゼッツの戦争論である。日本は戦闘に敗けて戦争目的を達成した。日本こそ勝ったのであり、日本の戦争こそ、“聖なる戦争”であった。 ある人は敗戦によって日本の国土が破壊されたというが、こんなものはすぐ回復できたではないか。二百数十万の戦死者はたしかに帰ってこないが、しかし、彼らは英霊として靖国神社に永遠に生きて、国民崇拝の対象となるのである。」 ●なお、最後に余談になるが、第二次世界大戦中にトップ・スパイとして活躍し、ナチスの秘密や第二次世界大戦の真相を知り尽くしていたと言われているユダヤ系スペイン人のベラスコという男が、死ぬ前に、「第一次と第二次の2つの世界大戦は、二派に分かれたユダヤ資本家らの争いに起因した」、「第二次世界大戦で真の意味の敗戦国はイギリスだろう」と語っている。参考までに。 |
[ 430] 自公政権打倒のために集まろう ロックフェラー来日の目的
[引用サイト] http://mdcjbu.blog88.fc2.com/blog-entry-325.html
格差社会・過労死・自殺・家族崩壊しないためにストップ・ザ自公ファシズム・格差社会にNO 共生社会にGO 雑談日記(徒然なるままに、。):三浦容疑者唐突逮捕であっけらかんと出てきた共謀罪のキーワード。タイミングも臭すぎのマスゴミ祭りでイージス艦衝突撃沈から注目そらしで一石二鳥。(笑) (02/28) 雑談日記(徒然なるままに、。):初期報道のキャッシュまで消すことはないと思いますよ。イージス艦事故関連、漁民の声や哲大さんがホームレス支援してた話しとか。 (02/26) 少し大きい文字 湾岸戦争でイラクに攻撃された時、全面的にアメリカに助けられたクウェートが、この5月、遂に、自国通貨とドルとの連携(リンクシステム=ドルペッグ)制度を放棄した。 米国ドルは、最も恩義のあるクウェートにさえ、見棄てられてしまった。 サウジアラビア等の原油生産国である湾岸諸国も、ドルペッグ体制の放棄の検討に入った。 かつてニクソン大統領が、ドル紙幣の金塊との交換制度を廃止した、いわゆるニクソン・ショック以降、「国際通貨ドル」の崩壊に歯止めをかけてきた唯一のシステムである、ドルによる原油代金の支払い制度も、今、それが原油生産国によって見棄てられ始めた。 世界第一位の天然ガス生産国で、第二位の原油生産国ロシアも既にユーロによる支払い体制を作り、米国ドルは見棄てられている。 米国も、もはやドル単独の世界通貨体制は長続きしないと考えたのか、カナダ、メキシコとの共同通貨システムの検討に入ったが、今の所、動きは鈍い。 先日、米国政府は内々に中国政府に対し、中国が中心となり、日本を巻き込み、新しいアジア通貨体制を作らないか、と打診した。中国政府の反応は、上々であった。ユーロ通貨の成功例が既にあるため、アジアでも北米でも、新通貨システム導入のスケジュール設計は、そう難しくは無い。 問題は、ヨーロッパ各国の中央銀行、主要民間銀行が、ユーロ通貨導入に全面的に協力したような「協調体制」を、北米、アジアで形成出来るかどうか、に成否がかかっている。 特に、中国、アジア各国の主要民間銀行については、面従腹背、建前と異なり本音で何を考えているのか分からない、というのが米国金融筋の本音である。 中国の中央銀行HSBC=香港上海銀行は、元々、ジャーディン・マセソン等の麻薬取引銀行によって創立された。従って銀行の実態、実権は、赤パン、青パンと呼ばれる、麻薬マフィアによって仕切られている。麻薬マフィアの本音を正確に把握しなければ、新しいアジア通貨体制は、早晩崩壊する。 日本でも、事態は同様である。 バブル崩壊によって莫大な不良債権を抱え、外資に「乗っ取られた」日債銀、長銀と言った半官半民の銀行の不良債権の実態は、実は、バブル崩壊によって生み出された物ではなかった。山口組、稲川会、住吉連合といった広域暴力団のフロント企業(会社の形を取っている暴力団そのもの)に対し、こうした政府系銀行が、資金融資し返済されなかったものが、不良債権の大部分であった。暴力団の立てた実態の無い架空のビジネスに、自民党政治家が仲介を行い、その政治家と暴力団の圧力により、政府系金融機関が資金を融資したものであり、「最初から返済する気の無い借入れ金」であり、暴力団と自民党政治家が、政府系金融機関の官僚の「弱味」に突け込んで脅迫し、金を脅し取ったものであった。 これが、「不良債権」の実態であった。 脅し取られた日本国民の貯金は、自民党政治家の活動資金と、暴力団の海外進出資金となって消えた。この不良債権に対し、日本政府は国民の税金を投入し、返済の「手当」とした。 政府の運営する金融機関はヤクザ金融そのものであり、日本の国会議員の大部分は、ヤクザの代理人である。 郵便局の資金は、長らく財政投融資という名前で、政府の公共事業に投資されて来た。公共事業の行われる地域では、自民党政治家から事前に事業計画を知らされた暴力団が土地を安価に買収し、高値で政府に対し売り付け、公共事業を担う土木業者も地元の暴力団であり、その上層部が広域暴力団という構図であり、暴力団に対し事前に事業計画を漏洩した自民党政治家には、暴力団から政治活動資金が献金される、という仕組みが、日本経済を動かすエンジンの基本構造である。 このエンジンの最大の物が、郵便局である。郵便局を「民営化」し、事実上、ロックフェラーの銀行ゴールドマンサックスが「乗っ取った」背後では、ロックフェラー対日本の暴力団の、すさまじい利権闘争・戦争が行われて来た。 特に広域暴力団山口組の最大資金源でもある精肉業界では、最大手のハンナンの食肉偽装の摘発、北海道ミートホープ、雪印の摘発等、執拗に畜産、精肉業界だけが攻撃を受けて来た。ロックフェラーによる、山口組へのこうした攻撃に対し、米国からの輸入牛肉に狂牛病の危険部位混入=輸入停止という、激しい反撃が日本側から加えられて来た。暴力団とロックフェラーに挟まれた松岡農林水産大臣が自殺に追い込まれた所に、この「戦争」のすさまじさが明確に出ている(松岡は殺害された可能性が高い)。 郵便局を始め、ロックフェラーが日本の金融業界を乗っ取るには、こうした既得権を持つ日本の暴力団を潰す必要がある。ロックフェラーという米国マフィアと日本暴力団との縄張り闘争である。 もちろん、誰も表向きはヤクザの縄張り闘争とは公言しない。ヤクザへの不正融資は「不良債権処理」とキレイ事の言葉で語られ、ロックフェラーによる山口組への攻撃は食肉偽装、日本からの反撃は狂牛病対策という、キレイ事の言葉で語られた。 郵便局のロックフェラーによる乗っ取りは、「ムダな公共事業の廃止」と呼ばれ、このロックフェラーの郵便局乗っ取りをバックアップする評論家は、公共事業に巣食う日本の暴力団=自民党政治家を、「ヤクザ資本主義」を克服せよ、と糾弾した。 日本を巻き込み、中国を中心として、新しいアジア通貨体制を形成するには、中国の麻薬マフィアと共に、日本の金融業界のバックにある、このヤクザ資本主義の本音と動向を、正確に把握しなくてはならない。 こうした今後100年以上に渡る、アジアの通貨システムの構築という最も重要な問題の情報収集には、ロックフェラー本人が直接情報収集に動くのが、ロックフェラー一族の「帝王学」である。 表向きの理由とは全く別に、先日、ロックフェラーが来日した真の目的は、ここにある。 ロックフェラーは、ロックフェラー一族と共に、米国麻薬専売企業ラッセル社を創立したフォーブス一族の雑誌「フォーブス」の、アジア支局長として長らくアジア全域の金融システムについて「情報収集」を担当してきた日本の某評論家とも会い、情報収集を行った。日本のヤクザ資本主義について、造詣の深い人物である。 明治維新は、どのように行われたか? 旧態依然たる徳川幕府に任せておけば、日本は欧米に「乗っ取られる」と称して、麻薬企業ジャーディン・マセソンは、坂本龍馬等に幕府打倒のための「武器弾薬」を与えた。明治維新は、天皇を掲げ、民族主義を掲げたが、実態はヨーロッパ資本主義の「操り人形」であった。 麻薬企業ラッセルの創立者の雑誌「フォーブス」の評論家は、「このままでは日本は外資に乗っ取られる」と主張し、自民党政権打倒のための「ヤクザ資本主義の克服」という「武器弾薬」を与え、ロックフェラーの代理人・小沢一郎を推薦し、天皇と日本の民族主義を掲げているが、実態はロックフェラーの代理人であった。 |
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